人生ひまつぶし★T子さんとひな祭り:その5

前回からの続きです。

T子さんの病状

T子さんの病気は乳がん。

乳がんにもいろいろタイプがあるのです。
T子さんの場合は、癌細胞が皮膚から飛び出て潰瘍化するタイプで、「花咲き乳がん」と呼ばれるものでした。

「キレイな名前なんだけどねぇ」とT子さん。

★★★

T子さんはいつも「いいにおい」がするのです。
石けんみたいな香り。
それには秘密がありました。

 

花咲きガンは、痛みはもちろんなのですが、飛び出た腫瘍から腐臭がするそうで、それが原因で引きこもりになる方もいるのだとか。

そこで、患者さんのQOLを向上するために、臭いを軽減するクリームが開発されたそうです。

「臭くない?」と聞くT子さんに、「ぜーんぜん。というか、いい匂いがする~」と言っていた私。

★★★

T子さんは、子宮がんの後、乳がん、そして今回は再発です。

だから、T子さんの古くからの友人たちは、ある意味「覚悟」ができていたんですね。

 

一方、私はというと。

知り合ってまだ数ヵ月、しかもランチしたりおしゃべりしたり、比較的元気に見えたので「寛解する」と100%信じてたんです。

「元気になったらあれしよう、これしよう」という私に、「そんなこと言ってくれるの、莉乃さんだけだよ、うふふ」と笑うのでした。

楽しい計画

ご縁が深いと言われて訪れた三峯神社なのですが。

 

三峯神社は、毎月1日に強力なお守りを配布します。

気守り」というお守りで2000円!

とても御利益があるらしく、1日には気守りを目当てに参拝者が殺到し、西武秩父駅から神社までの道路が大渋滞になるほどの人気ぶりだそうです。

 

欲しいなぁ・・・。でも大渋滞にはまるのはイヤ。
とすれば、方法は1つ。

 

前日に宿泊すればいいじゃないか

 

調べてみると、神社の境内の中に、興雲閣という宿があるのです。

さっそく空室情報のページを見てみたら・・・・月末は2年先まで満室

みんな考えることは同じかぁ。
まぁ、そんなもんだよねぇ。

それにしても2年先までいっぱいとは・・・。

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なぜか逆転ホームラン?!

ある日、仕事をしていると、「ん?空き室ある?」という感じがしたんです。

 

再び空室情報のページを開いてみると・・・・。

なんと、11月30日だけ「空き室あり」!

半信半疑で電話すると、なーんてことなく部屋が取れました!
3人まで宿泊できる部屋をゲットできたのです。

 

すっごーい!信じられないっ

さっそくT子さんに連絡です。

三峯神社の宿が取れたよ!
一緒に行こう~

T子さん
え、ほんと?
すごいじゃない?
何したの?

わかんないけど、たぶん神様からプレゼント。
絶対一緒に行こうね。

T子さん
行く行く、絶対行くよ~

そのときは2月。

11月はまだまだ先です。
春が来て夏が来て、秋が来て、もうすぐ冬だねって頃に出発です。

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3月3日

最後の化学療法にトライしたT子さんでしたが、効果はなく、「もうこれ以上何もできない」という状況で退院することになりました。

 

実家に戻るも、訪問看護が必要で、でもいいところが見つからなくて・・・。

何かしたくても、お見舞いに行くくらいなんですよね。
T子さんの手はリンパ浮腫でパンパンに腫れていて、本当につらそうでした。

元夫はこういった自宅療養の方の訪問看護のお医者さんをしているので、情報収集したり・・・「とにかくできることはないかな」と考えていました(でも、できることは何もなくて)。

 

しかし、浮腫があまりにひどく、とうとう自宅では介護が難しくなり、病院へともどることになったんです。

★★★

病院にお見舞いに行くと、いちだんと痩せてしまったT子さんが。

それでも、おもしろい話をして笑わせると、「やめて~、唇が切れる~」とか言ったりね、持って行ったフルーツを美味しそうに食べてくれたりしました。

 

T子さんは急速に弱っていきました。

 

ベッドの上で身の置き所がなく、苦しそうに何度も姿勢を変えるT子さん。

そのうち、痛すぎて痛すぎて、モルヒネなどの薬で眠っていることが多くなりました。

 

★★★

私の母は、61歳のとき膵臓ガンで亡くなりました。

食べられなくなって、どんどん痩せていって、最後は本当に痩せてしまった。

そのときの母の顔に、T子さんの顔がだんだん似てきて・・・なんともいえない怖さを感じました。

★★★

 

そして、T子さんは亡くなってしまいました。

3月3日。

ひな祭りの日を選ぶなんて、とってもT子さんらしい。

出会ってから4カ月も経っていませんでした。

★★★

お通夜のT子さんの写真はふっくらしていて、私が知らないT子さんだった。

そのとき私は、「T子さんには、これまで長い人生があったんだなぁ」って、当然のことに気付いたのです。

もっとT子さんのいろんな話、聞きたかったなぁ。
私も、もっとおもしろい話、いっぱいあったのになぁ。

11月30日

T子さんが亡くなって、ちょっとぼーっとしてしまって。

それでも私には日常があり、月日は流れていきました。

 

そして、もうすぐ11月30日、となったある日。

どうしよう、三峯神社

もったいないのでキャンセルなんてできません。

というわけで、友だちに声を掛けました。
彼女は、本音で話ができる数少ない私のお友だちです。

彼女も一度三峯神社に行ったことがあるのですが、「鳥居から続く道を歩いていたら、なんだか涙が出てきちゃって」という人。
きっと、ご縁があるんですよね。

というわけで、彼女と2人で行くことにしました。

 

「あれ?3人部屋でしょ?」と思った方、その通りです。
「もう1人は、T子さんね~」のつもりです。

悪天候

前回の三峯神社は抜けるような青空でしたが、今回はガスりまくりました。

三峯神社の神様は、山のてっぺんの奥宮にいらっしゃいます。

奥宮まで行こう!」ということになりました。

頂上までは、修験道の山道を行く必要があります。

往復2時間弱かかるので、早めに出発!です。

 

チェックインで

チェックインは15時なのですが、30分くらい早めに到着しました。

奥宮登山のために荷物だけ置かせていただこうと思ったら、「お部屋の準備ができているのでどうぞ」って。

「こちらに」と、差し出された宿帳を見てみると、新しいページにすでに名前が1つだけ書いてあります。

「私たちは2番目なのね~」と・・・。

書いてあったのは・・・・なんとっ

 

T子さんの名字だっ!

実名は書きませんが、佐藤や鈴木など、よくある名字ではありません。
とあるサイトで調べてみたら、日本の名字ランキングで813位でした・・・。

 

でも、私、ぜーんぜんビックリしなかったのね。
だって、あんなに「絶対行こうね!」って約束したもんね。

「あ、やっぱり来てるんだ。そりゃそーだよ、当然だよね!」と思いました(笑)

奥宮へ

視界ほぼゼロの状態で奥宮へ。

三峯神社の眷属は山犬(オオカミ)です。

奥宮までの道は険しいので、奥宮への登山道を安全に進めるように、一緒に山犬さんがついていってくれるんですよ。

ありがたや~

鳥の鳴き声、風の音、自分たちの足音しかしない神秘的な空間でした。

 

奥宮へは、季節が季節だし、天候も悪いし、で我々だけ。

途中、すれ違ったのは1組だけでした。

★★★

奥宮に到着すると、社には立派な鳥が止まっていました。
見たことのない立派な鳥だった。

絶景のはずが、ガスって何も見えず。
しかも、ますます霧が濃くなります。

急いで下山し、暗くなる前になんとか戻ってくることができました。

夕食で・・・

夕食は大広間でいただきます。

ずらりとテーブルが並んでいて、「XX区 XX様」という立て札があります。

 

・・・と、みなさま、もう予想がつくと思いますが。

「T子さんの名字はどこかな?」と探したんですね~。

 

そして、もう予想がつくと思いますが。
T子さんの名字の立て札はなかったんですね~。

 

盛りだくさんのごちそうでした。
そして、スタッフの方、みなさんが温かく素朴で、ほんとうに居心地がよかったです。

パワーたっぷりの温泉で疲れを癒やしました~。

その夜

温泉もパワーたっぷりですが、お部屋でも眷属の山犬さんが守ってくれます。
結界の中で一晩過ごすわけですから、ものすごいことですよね。

 

その夜は、一晩中、いろんな存在がいろんなことをお話してくれて、何回か目が覚めました。
夢って、直後はしっかり覚えていて、「大丈夫、おぼえてる」と思うんだけど、時間が経つとさっぱり忘れるでしょ?

この日も同じで、もったいないことしました。

さっぱり忘れてしまった~(笑)

 

唯一おぼえているのは、本格的に目覚める直前に言われた「ロックフィンガー」。

ググってみたら、なにこれ(笑)
オモチャじゃん。

「ロッキングフィンガー」だと、指の関節の病気のようですね。
やばいです・・・。
気をつけなさいよ、ってことかなぁ。

「ロッキング」ではなく「ロック」であることを祈る・・・。

★★★

興雲閣の宿泊者には、気守りが確保されています(行列に並ぶ必要なし)。

帰りは、マイクロバスで駅まで無料で送ってもらえます。

お食事も美味しいし、温泉もあるし、スタッフの方々もとても気持ちよいです。

おそらく80代かな?と思われるおばあちゃまが配膳をされていました。

興雲閣、おすすめです。

おわりに

T子さんの思い出におつきあいいただき、ありがとうございました。

もうすぐ亡くなって1年が経とうとしています。

この世でのお付き合いはとっても短かかったけど、今でも大事なお友だちです。

肉体がなくなって自由になったT子さん。
いろいろエンジョイしてるんじゃないかな。
ときどき遊びに来てくれていると思うのです。

T子さん、ありがとう~!
またね!

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまの毎日がキラキラ輝きますように~!

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